本が出ました!「美しい風景写真のマイルール」

単焦点レンズとは

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

一眼レフやミラーレスカメラの醍醐味のひとつに、レンズ交換があります。いろんなレンズを付け変えることで、様々な表現が可能になるんですね。

レンズはたくさん種類がありますが、大きく2つに分けることができます。ズームレンズと単焦点レンズです。

単焦点レンズとは

35mmレンズ

単焦点レンズとはズームできないレンズ

一眼レフカメラやミラーレスを購入されるかたの多くはレンズキットを手にされていると思います。レンズと一緒に購入することで別々に買うよりちょっとお得に買うことができます。

それらのほとんどはズームレンズだと思います。ダブルズームキットなんてのもありますよね。ズームというのは被写体を拡大したり、縮小したりすることをいいます。

一方、単焦点レンズというのはズームができないもののことをいいます。

単一の焦点距離のレンズ

カメラ用語はどうも漢字が難しくていけませんね。「たんしょうてん」レンズと読みます。こういう熟語は噛み砕いてみると案外理解しやすいです。

単一焦点距離のレンズ

という意味なんですね。

焦点距離

焦点距離っていうのはレンズに書いてある◯◯mmっていうやつです。例えばお手持ちのズームレンズには「18-55mm」って書いてあったりすると思います。

この焦点距離の数字が小さいほど広い角度を、大きいほど近くにズームして写すことができます。

ダンボー 18mmで撮った写真

こちらが18mmで撮った写真。(D5500と18-55mmのレンズ使用)

ダンボー 55mmで撮った写真

こちらが55mm。自分が動かずに、ここまで拡大したり縮小したりすることができます。便利ですね。

単焦点レンズのメリット

さて、いっぽう単焦点レンズなですが、ズームレンズでは自由に動かせていた焦点距離が固定されています。不便ですね。なんでこのコンビニエンスなご時世にわざわざそんな不便なものを作るんでしょう。

それは、単焦点レンズのほうがその焦点距離に特化したレンズを作ることができるからなんです。

ですので、ズームレンズに比べて以下のようなメリットがあります。

  • 明るい
  • 画質がいい
  • 軽い
  • 安い
  • 特化したレンズが作れる

ちょっとひとつずつ見てましょうか。

明るい

ダンボーと線路

レンズにはそれぞれ「f値」というものがあります。

お手持ちのレンズを見ると、中に羽根のようなものがあるのがわかるでしょうか。これを絞りといいます。これは人間の瞳孔のような働きをするもので、大きく開けばたくさんの光を取り込め、小さく絞ればその分、入ってくる光が小さくなります

絞りとf値の関係

これがどれくらい開いているか、という値のことを「f値」と呼びます。また、一番大きく開いた状態を「開放」と呼ぶのですが、レンズに記載されるf値というのはこの開放のものを指します。

ズームレンズの多くは、ズーム位置によって開放のf値が変わるのでお持ちのレンズには「f/3.5-5.6」というように記載されていると思います。高級なレンズになると、このf値が一定のものもあったりしますね。

んで、このレンズのf値なんですが、ズームレンズでは明るいものでもだいたいf2.8ぐらいです。たまにこれより明るいズームレンズもあったりするのですが、だいたいそういうのはSIGMAさんの変態レンズなのでちょっとした例外と思っていてもらっていいです。

一方、単焦点レンズのほとんどはf値がf2.0以下とズームレンズに比べてかなり明るくなっています。高級レンズになるとf1.4のものがほとんどですね。

ヒメボタル

たくさん光が取り込めるということは、暗い場所にかなりアドバンテージが出てきます。ホタルなどの暗い場所の写真が撮りたい時、天の川のような淡い光の写真が撮りたい時にはf値の小さいものを選んだほうが確実に撮影がしやすいでしょう。

一度に取り込める光が多いのでシャッター速度も早くすることができます。

絞り・シャッタースピード・ISO感度 – ログカメラ

明るいとボケる

背景のボケた写真

一眼レフカメラなどの写真の特徴的なもののひとつに「ボケ」の表現があります。

なぜ明るいとボケるのか説明しだすとまたやたらと長くなるので、今回は割愛したいと思うのですが、まあ、あれですよ。f値が小さい明るいレンズはよくボケます

ボケると何がいいのかって、なんとなくかっこいい気がするんです。一眼レフっぽい!僕なんてボカしたくて一眼レフカメラかったようなとこありますからね。

あんまりふざけてると怒られるんでちょっと解説しとくと、背景をボカすことで何が写したいか明確になるんですな。写真は引き算なんてよくいいますが、構図の中でくっきりしているところと、ボケているところがあると、くっきりしている所に視線が誘導されます。こういうのを主題が明確になる、なんていいます。何を見せたいかしっかりさせるのは大事です。

ネモフィラ ポピー ひたち海浜公園

ボケる要因はいろいろあるのですが、その多くの割合を占めているのがレンズのf値です。一眼レフやミラーレスをレンズキットで買ってきたのに、思ったほどボケないと感じているかたはいないでしょうか?

キットレンズの多くは「18mmでf3.5」〜「55mmでf5.6」というものが多いんです。これくらいのf値の一眼レフであればまあまあボケるんですが、それでもなんかプロとかが撮っているような写真みたいにボケないなー。と思いません?僕は思っていました。

これはやっぱりf値の問題が大きくて、単焦点レンズだとf1.4やf1.8のf値で撮影できるようになり、見違えるようにボケるようになります。

画質がいい

浜野浦の棚田

f値を小さくしてやると、ボケた写真が撮れて楽しいです。

とはいえ、なんもかんもボカして撮ればいいわけではありませんよね。風景などでは隅から隅まできちんとピントを合わせたいものですし。

そうなってくると単焦点レンズなんかいらんやーん。となったりするのか?いえいえ。単焦点レンズでは絞ってもその効果を発揮します。

f値によって画質の良さは変わってきます。レンズ本来の性能を発揮できるのはf5.6くらいからです。よく聞きません?「開放は甘いがf5.6くらいからシャープさがピークを迎える」なんてレビュー。

そうやってレンズ本来の画質のピークを迎えた時、ズームレンズと単焦点レンズを比べると圧倒的に単焦点レンズのほうがキレイなのです。

画質と一言でいってもいろんな要素が複雑に絡み合っています。画質を左右するのは以下の要因が複雑に絡み合っています

  • 解像度(細かいものをどれくらい細かく写せるか)
  • コントラスト(明暗をどれくらいクッキリ再現できるか)
  • 階調(微妙なグラデーションをどれくらい再現できるか)
  • 歪曲(レンズで撮影することによる画像の歪み)
  • 色収差(光の波長のズレによる色のにじみ)
  • 逆光耐性(逆光時における画質低下への耐性)

どうですか?おわかりいただけるでしょうか。わかりませんよね。僕もイマイチわかりません。蛇足ですが、カメラ用語でよくわからないものが出てきたらすっ飛ばす、というのは精神衛生上とてもいいと思っています。なので、今回はこんなのが画質に影響するんだ、くらいのことを頭の片隅にでも置いてすっ飛ばしましょう。

少なくとも今日覚えて帰ってもらいたいのは、これらの各性能は単焦点レンズとズームレンズを比較した際、単焦点レンズのほうが間違いなくいい、ということです。

「単焦点レンズなんでバッキバキに解像するわー。単焦点レンズなんでー」とドヤ顔で言えるようになります。

軽い

単焦点レンズとズームレンズ

こちらの2本のレンズ。左が50mmf1.4の単焦点レンズ。右が24-70mmf2.8のズームレンズです。

ズームレンズというのは様々な焦点距離に対応させなければいけないのでどうしても大きくなりがちです。一方、単焦点レンズは焦点距離が固定されているので、余計なものを詰め込む必要がなくコンパクトに作ることができます

もちろん、それぞれの焦点距離ごとのレンズを用意すれば、ズームレンズより数が大きく、最終的にはかさばり重くなってしまうのですが(笑)

安い

豚の貯金箱

さきほどの2本のレンズなんですが、左の50mmf1.4が定価70200円、右の24-70mmf2.8が定価288900円。ズームレンズのほうがおよそ4倍くらいの値段ですね。

ちょっと極端な例ではあるのですが、それでもやはり単焦点レンズのほうがズームレンズより概ね安く購入することができます。こちらもまあ、それぞれの単焦点レンズを用意すると結局は高くなるのですが。

特化したレンズが作れる

焦点距離を固定することで、いろんな個性あるレンズが作れるようになります。

マクロレンズ

マクロ 花

花や昆虫をググッと大きく写したい時はマクロレンズというレンズがあると便利です。

マクロレンズも単焦点レンズのひとつ。普通のレンズでは描けない世界が表現できます。

魚眼レンズ

魚眼とウユニ

フィッシュアイレンズとも呼ばれるこのレンズ。魚の眼はかなり広い視野をもっているそうで、それがこのレンズの語源となっています。

その名のとおり、広い画角をもっており、約180度の角度を写真に収めることができます。ただ、その画角を写真という平面に収めるため周辺に独特の歪みが発生します。

これが魚眼レンズのひとつのアジとなっており、非常におもしろい表現が可能になります。飛び道具的に使われることが多いように思いますが、使いこなせると非常に楽しいレンズのひとつです。

チルトシフトレンズ

広角で撮ると出てしまうパースの補正、広範囲にピントを合わせたい時のズレの補正、など建築物撮影などによく用いられるレンズ。

最近ではその特製を逆に活かし、ミニチュア写真のような作品なども見られます。

単焦点レンズのデメリット

岩場から見上げるダンボー

ひとしきり単焦点レンズのいいところを上げてみましたが、やっぱりいい面があれば悪い面もあります。デメリットもきちんと理解したうえで付き合っていきましょう

  • レンズ交換が必要
  • ひとしきり焦点距離をそろえると重いし、かさばるし、お金かかる
  • ズームできない

レンズ交換が必要

レンズシステム

焦点距離が固定されているため、単焦点レンズだけだとレンズ交換は必須になります。

レンズを交換できるのが一眼レフやミラーレスの魅力のひとつではありますが、それでも面倒な場面、というのは確実にあります。また、雨の降りしきる中、風が強くホコリが舞い上がっている中など、レンズ交換をためらわれる場面というのも写真を撮っていたら何度も出くわします。

レンズ交換していたため、シャッターチャンスを逃すなんてことも少なくないので、カメラを複数台持っているカメラマンを見ることも少なくないですね。

シチュエーションによってはズームレンズのほうが有利、ということは少なくないことを理解しておきましょう。

ひとしきり焦点距離をそろえると重いし、かさばるし、お金かかる

f64NSCX入るもの

画質はなるほど、単焦点レンズのほうが抜群にいいのですが、あらゆる場面に対応しようと、いろんな焦点距離の単焦点レンズを揃えてみると、ズームレンズに比べ重く、かさばります

必要な単焦点だけ持ち出せばいいのですが、どうしても「持って行かなかったのが必要になるんじゃないだろうか」と不安になり、ついつい全部持ち出してしまいます(笑)

重くかさばると、どうしても足を使った構図づくりがおそろかになってしまいますし、そうなれば本末転倒です。ズームレンズであれば1本で済む場面もありますし、その分いろんな構図を試せます。

また、1本1本の価格はズームレンズに比べて比較的安価な単焦点レンズも、その焦点域を全て単焦点で揃えようと思うとやっぱりお金もかかりますね

ズームできない

Photographer 164673 640

あたりまえっちゃあ、あたりまえなのですが、ズームできません

きちんと足を使って、被写体の構図を考えるのが一番なのですが、場所によっては足すら使えないとこなんてゴマンとあるんですよね。もうちょっと寄りたい、もうちょっと離れたいのに前に柵があったり、後ろに壁があったり。

写真撮っていると「もう1歩」がすごい大事になってくることは多々あります。

また、ズームできないことで撮影のテンポが悪くなることもありますね。

まとめ

ズームレンズには無い魅力がたくさんの単焦点レンズ

いいんです、最初はなんかすげえボケるなーってぐらいで。手っ取り早くそれっぽい写真が撮れるのは正義だと思っています。

そうして楽しく撮ってると、だんだんボケではなく、ズームにはない解像感にしびれる日が来ると思います。単焦点レンズそれぞれのクセが分かる日がくると思います。そうなってきたら、また1歩、レンズ選びの楽しさに触れることができるようになるでしょう。

ズームレンズで満足してるし、という人も、安いのでいいので1本単焦点レンズを使ってみてほしいなあと思います。今までとはまた違う表現の扉をきっと開けること間違いないですよん。

関連記事