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ゲシュタルトの法則という言葉があります。
これは、ものを見るとき、個々ではなくグループやまとまりとして認識するという傾向のことをいいます。難しそうに聞こえますが、普段の生活でも無意識に認識していることだったりします。
このゲシュタルトの法則、デザインの分野などでも効果的に使われているのですが、写真の構図づくりや視線誘導でも活かせるものなので紹介してみます。
ゲシュタルトの法則
名前や定義だけ見ているとちょっと難解なので、実際の例を見ながらゲシュタルトの法則と、写真への活かし方などを見ていきましょう。
近接
距離の近いものをひとまとまりとして認識してしまうことを近接の法則と呼びます。
この図を見たとき、あなたは3つの隣り合った◯がひとつのグループと感じたのではないでしょうか?
人は、距離が近いもの同士をグループを認識してしまうのです。
類同
色や形などなんらかの類似性をもつものをグループ化して認識することを類同の法則といいます。
この図を見たとき、赤・緑・青が同じグループのように感じたと思います。
色だけでなく形に類似性があってもグループ化されやすくなります。
閉合
脳には欠けている部分を補って知覚しようという働きがあります。例えばこの◯の欠けた部分にうっすらと三角形を感じるのではないでしょうか。
閉じたものをひとまとまりのものとして認識することを閉合の法則といいます。他にも括弧などは】【だと別々のものに感じますが【】だとひとつのパターンとして認識されます。
連続
連続というのは、図形はつながった形に見えやすいという法則です。例えば、上の左の図形を見たとき、あなたは2本の線が交差しているように感じるのではないでしょうか?
左のように4本が別々の図形に見えたり、右のように「く」の字が2つ繋がったようには見えなかったはずです。
このように連続しているものを図形として認識しやすいことを連続の法則と呼びます。
面積
2つの図形が重なっているとき、小さい面積のほうが図形として認識されやすいことを面積の法則といいます。
例えば上の図では四角と丸が重なっていますが、四角にあまり意識が向かず丸を認識したのではないでしょうか?
対称
人は対称的なものに安定感を感じ心地よく感じる習性があります。ですので、2つの図形でもそれが対称的であればひとつのグループとして認識されやすくなります。これを対称の法則と呼びます。
共通運命
同じ方向に動いている、同じタイミングで点滅しているといったものはグループとして認識されやすくなります。これを共通運命の法則といいます。
共通運命の法則は近接や類同よりも強く働きます。多少離れていたり、大きさが異なっていても同じ動きをしているものは同じグループに見えます。
以上がゲシュタルトの法則となります。
実際の例を見てみると、普段気に留めなだけでなんとなく感覚として理解できたのではないでしょうか。
つまり、人は視覚的な情報を様々なパターンにあてはめて無意識にグループ化しているということがわかります。
ゲシュタルトの法則を実際に写真にあてはめてみる
では、実際にゲシュタルトの法則を写真にあてはめてみましょう。
近接
複数のテントが近く固まっていることでひとつのグループに見えます。テントのかたまりとヘッドライトを灯した登山者とが対比的になっているのがわかりますね。
テーブルが並べられていますが、中央に隙間があることで左と右との近いもの同士の2つのグループに見えます。
類同
赤いチューリップと黄色いチューリップの2つのグループがあることがわかります。
青いネモフィラの大きなグループの中にぽつんと赤い花がある様子。
閉合
手前の紅葉の枝々。右側にはありませんが、ぐるりと閉じた額のように感じます。
こちらも手前の桜の花はすべて繋がってはいませんが、まわりをぐるりと囲んでいるように感じます。
連続
雪原を歩くキツネの足跡。ひとつひとつ違う足跡ですが繋がっているのでひとつの線のように感じます。
こちらも杭はひとつひとつは離れていますが、ひとつの直線として認識してしまいます。
面積
手前の小さなカクレクマノミを図形として認識します。後ろ側にあるのはイソギンチャクなのですが、一見すると背景のように見えるかと思います。
こちらも小さなビールジョッキは形として認識しますが、それより大きな山々はパッと見では図形としては認識しないですね。
対称
リフレクションなんかは対称の良い例のひとつ。安定感があり、心地よく感じるはずです。
ただのガソリンスタンドですが、左右が対称なだけで見ていて安定感を感じます。
共通運命
同じ方向に向かっていく白鳥の群れ。動きの形などはバラバラですが、ひとつのグループとして認識できます。
夜に点滅するように光るヒメボタル。こちらも大きなひとつのグループとして感じることができます。
ゲシュタルトの法則と構図の構成を考える
人間の脳はある図形を見たときにそれらをグループ化したり意味をもたせたりするというのを『無意識的にやっている』ということがなんとなく理解できたかと思います。
じゃあ、このゲシュタルトの法則が写真にどう活きていくのかというと、これ構図の構成を考えるときにとても役に立ってきます。
ゲシュタルトの法則と視線誘導
あなたが撮影した写真の中の見てもらいたい部分という場所に、閲覧者の視線をきちんと誘導してあげることはとても大切です。
ここを見てほしいんですよ!というように視線の流れを作ることは、構図で求められる最も大事なことのひとつです。
また、主題にのみ目をむけさせるだけでなく、1枚の写真の中で視線がグルグルと循環するのも、作品を長く見てもらうために必要なことです。
なぜ構図の中に視線誘導は必要か?視線誘導の重要性について考えてみた
そんな視線誘導もゲシュタルトの法則を理解しておくといろいろと応用が効くようになってきます。
この雪原の中に足跡のある写真はゲシュタルトの法則のうちの「連続」で例としてあげています。
こちらの写真も連続の例ですが、連続しているものはあるベクトルを持ち、視線をそちらに向けるということがわかります。
「共通運命」をうまく利用すれば、これもグループの動きとして視線を誘導することができるでしょう。
「面積」を使えば複数の要素を重ねながらも、視線を向けさせたいものに誘導させることができます。
閉合の例であげたこちらの写真は、まんま額縁構図と呼ばれる構図のひとつです。
額縁構図とは?被写体を囲むことであっという間にそれっぽくなる理由!
ゲシュタルトの法則とビジュアルウェイト
構図を作る際に意識したいことのひとつがビジュアルウェイトです。
詳しくは以下の記事を参考にしてほしいのですが、画面内の物や形、色などには『視線を引きつけるような重さ』があり、その重さを画面の中でバランスをとってやるというのがビジュアルウェイトという考え方です。
例えば作例であげたこちらの写真。奥にある山、登山者のヘッドライトの光、色とりどりのテントという構成です。
暗い中に色とりどりのあるテント郡にはビジュアルウェイトがあります。
これもなんなら右側に偏ってしまいそうな写真ではありますが、強烈なコントラストのあるヘッドライトを灯した人が点景として、さらに奥には美しい燕岳が質感のあるビジュアルウェイトをもってして、色とりどりのテントとのバランスをとっています。
このうちのテントの塊というのは近接の例でとりあげましたよね。近くに集まったものが大きなグループとしてビジュアルウェイトを持ち、構図の中で大きな意味を持ってくるのです。
このようにゲシュタルトの法則を使ってみると、ビジュアルウェイトへの理解も深まってきます。
こちらの写真は「類同」を使った写真。青いグループと赤いグループの2つに分かれています。「面積」の効果で赤い花にが強烈なビジュアルウェイトを持っていることもわかります。
こちらは「近接」により認識された2つのグループがそれぞれビジュアルウェイトを持っています。「対称」の効果で安定感があり画面全体でお互いがどっしりとした重さを持っているという構図です。
まとめ
写真というのは感覚的でセンスを問われることが多いような気がします。しかし、そういった感覚的な部分をしっかりと言語化してやるということも非常に大事だと思うわけです。
今回とりあつかったゲシュタルトの法則も、人がなんとなく感覚的に認識していたものを言語化したものです。
構図を構成する要素というのたくさんありますが、その中でも大事な視線誘導やビジュアルウェイトに大きく関係してくるというのもおわかりいただけたかと思います。
次に撮影に出かける際には目の前の被写体がそのようなグループを形づくっているのか?というのも少し意識してみてはいかがでしょうか?