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レンズのことを調べているとちょくちょく出てくる収差という言葉。
詳しくやると理系な話になってけっこう難しいのですが、今日はその種類と収差を解消するための方法をできるだけわかりやすく説明してみようと思います。
収差とは
収差について細かく話だすとかなり難しくなります。後半で詳しくさわろうと思いますが、まずはざっくりと理解してみましょう。
光はレンズを通ってセンサーに記録される
写真が写る仕組みを図にするとざっくりこんな感じです。光がレンズを通り、センサーに像を結ぶことで記録されます。
理科の授業とかでやったような覚えがありますね。なんとなく思い出しながら読み進めてください。
光をレンズを通して屈折させることでセンサーに像を結ばせます。
ここが今日のポイントになります。
センサーに像を結ばせるためにこのようなことを行っているのですが、これが収差の原因となってしまうのです。
レンズを通ってしまうことで支障が出てきてしまうことを収差という
レンズの素材が原因
光は波のように進んでいますが、屈折がおこるとき色の波長によって屈折率が変わってきます。プリズムに光を通すと色が分かれて屈折しているのが見てとれます。
レンズも同じように光を通し、屈折させるものですので光が分かれてしまうことがあります。
この写真では手前が紫、奥に緑色が見えますね。これは本来の色ではなく、レンズに光が通り屈折してしまうことでおこります。
このように「レンズで光を屈折させると色がわかれてしまう」ことが原因で起きる収差を色収差と呼びます。
レンズの形状が原因
カメラのレンズはいろんなレンズの組み合わせで構成されていますが、一番基本的になるのは凸レンズです。身の回りで一番イメージしやすい凸レンズは虫眼鏡ではないでしょうか?
凸から分かるように中央部分に厚みがあり、でっぱった形状をしています。
この形状のおかげで光を屈折させることができ、センサーに像をを結ばせることができるのですね。
例えば星のような点を写していた場合、センサーには点が点として写るのが理想なわけです。
しかし、ここで問題が。上の図のように理想的に光が収束して像を結んでいるのならいいのですが、
レンズはカーブを描いており思ったとおりに光が一点に集まらなかったりします。また、上の例では光が直進してきていますが本当はいろんな方向から光が入ってきますよね。そのいろんな方向から入ってくる光も屈折して像を描くのですが、これらも理想的な像を描かないことがあります。
上の図では点が少しずつズレて結像しているため、このようにぼやけたようになってしまいます。
こういった「レンズで光を屈折させたため理想的な像を描かない」のが原因で起きる収差を単色収差と呼びます。色収差が光の色が原因で起こっていたのに対し、こちらはひとつの色でも起こる収差なので単色色収差と呼ぶんですね。
いったんまとめましょう。
写真はレンズで光を屈折させてセンサーに記憶させる
光を屈折させることで起きてしまう現象を収差と呼び、以下のように分けることができる
収差を解消する3つの方法!
ざっくりとした解説でもちょっと難しかったのではないでしょうか?ということで、今日はもう色々すっとばしてまずはその解消方法を覚えておきましょう。
詳しい収差の種類とかはあとで詳しく説明しますが「写真をとって色がにじんだり、ゆがんだり、ぼやけてしまう」という経験がある人はこれらのことを試してみるといいでしょう。
収差を解消する方法は3つあります。収差の種類によって効果があるもの、ないものもあるのですがまずはこれらを覚えておきましょう。
絞る
収差は絞ることで解消されるものが多いです。よく、レンズのレビューなどを見ていると「f4あたりから画質が良好となりf5.6〜f8でピークになる」みたいな言葉を見たことがないでしょうか?風景なんかもシャープに撮るために絞って撮ろうなんていわれますよね。
一番の要因は絞ることで収差が解消され、像のゆがみやぼけがなくなることでシャープになるのです。
[blogcard url=”https://logcamera.com/shibori/″]いいレンズを使う
いいレンズを使うことでも収差を解消することができます。
収差とは「レンズを通ってしまうことで出てくる支障」のことでしたね。ということは、支障が出ないようなレンズを設計、製造してしまえばいいわけです。
レンズを通ると色が分かれてしまう色収差なら、色が分かれにくい材質のものを使う、レンズで屈折させるため理想的な像を作らないのなら理想的な像をつくるようなレンズを作る。
そういったレンズは原料が高かったり、作るのが難しくて高価になってしまうデメリットもありますが、その分しっかりと収差を抑えることができます。
後処理で補正する
収差というのはレンズの形によっていろんな種類のものが複雑に絡み合って発生します。あるひとつの収差を抑える形のレンズにすると、また別の収差が目立ってしまうといったように。
一方、その収差のなかにはレンズで抑えるのは難しくても、後で画像処理するのは簡単なものがあります。
最近ではそういった収差は後でデジタル的に処理するためあえて残し、デジタルで補正しにくい収差をレンズ側で抑える、といった設計をされることが多くなっています。
色収差の種類とその解決方法
ではここからはそれぞれの収差の症状と原因、それらの解決方法をひとつずつ見ていきましょう。
色収差には2種類あります。
レンズの中で屈折した光が色の波長ごとに分散してしまうことが色収差でしたね。
軸上色収差(じくじょう いろしゅうさ)
症状
紫や緑の色にじみが発生している場合、軸上色収差が考えられます。軸上色収差は中央〜周辺部まで全体的に発生します。
色のにじみと共にぼやけた症状が出るのも特徴的です。
原因
光は波長ごとに屈折の割合が変わる、ということはプリズムの例でお話しましたね。
上の図で色ごとに見てみると
- 赤は屈折の角度がゆるやか
- 青は屈折の角度が急
となっていることがわかります。
これによって
- 色がずれてにじむ
- 焦点の位置が変わってくるのでぼやける
という症状が起きます。
レンズに向かって真っ直ぐ入ってくる光=軸上の光が原因で起こる色収差なので「軸上色収差」と呼ぶわけです。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
○ | ○ | ○ |
軸上色収差はレンズの構成や素材で改善されます。高価なレンズでは軸上色収差が抑えられいるものが多いですね。
それでも発生してしまう場合は絞りこむことでも解消されます。また、後処理でも消すことが可能です。
倍率色収差(ばいりつ いろしゅうさ)
症状
中央には色にじみがなく、周辺で紫〜緑の色にじみが発生している場合、倍率色収差が考えられます。
倍率色収差が出た場合、チャート図を撮影するとこのような感じで写ります。
原因
光は真っ直ぐに入ってくるものだけではなく、斜めにも入ってきます。そして、この斜めの光の色もそれぞれ屈折率が違い分散してしまいます。
そうなると色によって倍率がことなってしまうため、増倍率が大きいものは外側に増倍率が小さいものは内側に色ズレしてしまいます。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
✕ | ○ | ○ |
倍率色収差は絞りを絞っても改善されません。絞りを絞れば改善した軸上色収差と異なる点ですね。
なので、光の分散を抑える材質でレンズを作る、特定の波長の光だけ屈折率が変わるレンズを使用するなどの対策がされます。
倍率色収差も後処理で補正することが可能です。
単色収差(ザイデルの5収差)の種類とその解決方法
単色収差は5種類あります。これらは研究者であるザイデルの名をとってザイデルの5収差とも呼ばれます。
- 球面収差
- コマ収差
- 非点収差
- 像面湾曲
- 歪曲収差
ザイデルの5収差(単色収差)は「レンズで光を屈折させたため理想的な像を描かない」、つまりレンズの形のせいで発生する収差でしたね。それではひとつずつ見ていきましょう。
球面収差(きゅうめん しゅうさ)
症状
画面の全体で輪郭がボヤケてしまう症状がおこります。これを球面収差と呼びます。
原因
レンズから入ってきた光すべてがきれいにセンサーに結像するのが理想的です。
しかしレンズというのは球面になっています。
そうなってくると中央部分とレンズの端のほうでは光の入射角が変わってしまうのです。
そのため光が収束しきらないので点が点とならず、ぼやけてしまうのです。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
○ | ○ | ✕ |
球面であるから発生する現象なので、レンズの中心から端までの曲率を少しずつ変えた「非球面レンズ」を使うことで解消されます。また絞りを絞ることも有効。
絞るとシャープになる、というのはこの球面収差が抑えられることでぼやけてしまった症状が抑えられるから。軸上色収差にも同じような理由で有効でしたね。
後処理で補正することはできないので注意が必要です。
コマ収差(こま しゅうさ)
症状
星などを撮るとわかりやすいのですが、彗星が尾をひいたような、とがったような現象が周辺部に現れることがあります。これをコマ収差と呼びます。
コマとはギリシア語で頭髪、彗星の英語コメットの由来がこのコマ。
画面周辺部というのは収差が発生しやすい部分なのでひとつの点像でも収差が複雑に絡んでいることがあります。コマ収差は名前の通り、彗星が尾をひいたような形のことだけをいいます。
星の撮影をするかたならよく聞くことがあるかもしれませんが「サジタルコマフレア」なんていうのも、コマ収差をはじめいろんな収差がごっちゃになっている現象のことをいいます。
原因
レンズに斜めから光が入ってくると、その形状ゆえにレンズの部分によって屈折率が変わってきます。
そうなると入ってくる位置によってセンサーに結像する焦点と位置が微妙に変わってくるため上のような図になります。
結像してるイメージ図を拡大してみるとこんな感じ。焦点があっているところは鮮鋭に像が写りますが、レンズの中央から離れていくほど結像位置がぼやけていきます。
このざっりしたイメージ図を実際の点像でのコマ収差の横に置いてみるとなんとなく理解できるでしょうか。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
○ | ○ | ✕ |
コマ収差も絞りを絞ることで解消されます。非球面レンズを使うことで補正することが可能です。
非点収差(ひてん しゅうさ)
症状
画面周辺部で、点が点に写らない(非点)症状を非点収差と呼びます。星のような点光源が横に伸びたり縦に伸びたりします。
オールドレンズでよく見られる「グルグルぼけ」も、いろんな収差が組み合わさっていますが非点収差の影響が大きいです。
原因
非点収差はけっこうややこしいので、難しければ症状と対策を覚えておけばいいと思います。
レンズは水平方向の曲率と垂直方向の曲率が違うことがあります。レンズはカーブを描いていますよね?
上の青色が水平に焦点があっている、赤色が垂直に焦点があっているとするとその位置が微妙に違っています。
重ねてみましょう。イメージ図ですが、このようにピント位置が変わってきます。
垂直方向にピントがあった場合、水平方向のピントはもう少し奥にあるため、センサーに結像した場合このように伸びたようになってしまうんですね。
これはピントの位置によって縦方向がぼやけたり横方向がぼやけたりします(厳密にいうと同心円方向と直径方向)
非点収差は光軸外、つまり斜め方向から入ってきた光で起こる収差なので画面周辺に発生します。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
△ | ○ | ✕ |
レンズが水平方向と垂直方向の焦点距離の違いで起きるので、ずれがないような設計のレンズであれば抑えられます。最近のレンズではグルグルぼけがあまり見られませんが、これはレンズの設計・製造で非点収差が抑えられているからです。
絞りを絞ることでもいくらか改善されますが、斜めに入ってくる光が原因なので絞りだけでは完全には解消されません。
像面湾曲(ぞうめん わんきょく)
症状
中央にピントを合わせると周辺がぼやけたり、逆に周辺にピントを合わせると中央がぼやけることを像面湾曲といいます。
この写真に例では中央は星が点で写っているのに周辺はぼやけているのがわかると思います。
原因
レンズの中に入った光はどの角度から入ってきてもセンサー面で結像するのが理想的なのですが、像面湾曲が残ったレンズでは斜めから入ってきた光(赤・青)は光軸から入ってきた光(黄)よりもレンズ側にできてしまいます。
このせいで中央にピントがあっていても周辺ではピントがずれてしまいボヤケてしまうという現象がおきます。
斜めから入ってきた光が原因となるので広角レンズに起こりやすい症状です。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
△ | ○ | ✕ |
斜めからの光が原因となるので絞りこむことでは改善しません。
レンズ表面のカーブを適切な値にすると改善されます。これ、非点収差の改善方法と似ていますが像面湾曲と非点収差は密接な関係にあり、非点収差が解消されると像面湾曲も改善されます。
歪曲収差(わいきょく しゅうさ)
症状
これまでの収差はにじみやぼやけのことでしたが、歪曲収差は像の鮮明度には関係のない形の歪みです。
歪曲収差に中央に向けてしぼんでいるような「糸巻型」とタルのように膨らんでいるような「タル型」の2種類があります。
一般的に糸巻型は望遠レンズに、タル型は広角レンズに出やすくなっています。ディストーションとも呼ばれます。
この写真は魚眼レンズで撮影。このように魚眼レンズは歪曲収差をあえて補正していないレンズだということがわかりますね。
原因
光軸からの距離によって像の倍率が異なるために歪みがおこります。
凸レンズ単体の場合、絞りがレンズの像側にあれば糸巻型、絞りがレンズの物体側にあればタル型になります。
対策
絞る | いいレンズを使う | 後処理で補正する |
✕ | ○ | ○ |
レンズの設計や非球面レンズを使うことで解決することができます。しかし、この歪曲収差はデジタルでかなり補正できるので最近では後処理やカメラ内でデジタル補正されることが多いです。
歪曲収差を補正しないことで他のレンズでなければ補正しにくい収差を抑えることができるからです。
まとめ
収差と聞くとけっこう難しい印象を持たれると思いますが基本的には「いいレンズで」「絞って撮影」することで解消されることが多いのです。しかし、シチュエーションによっては何かの収差は諦めないといけないこともあるでしょう。
「どんな収差があるのか?」と「その収差はどのように対策すればいいのか?」というのを覚えておくと撮影のときに役にたつでしょう。
ときにはなにかの収差をあきらめないといけない状況もあると思いますが、そんなときも「どのように残すのか、自分がどれくらい許容できるのか」をあらかじめ考えておくといいですね。