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写真撮影。特に風景写真において曇りというのは嫌われがちです。
なぜなら、撮れる写真がなぜかパッとしないものになってしまうから。
しかし、天気なんてものは自分でどうこうできるものではありません。せっかく撮りに来たのに曇りだからって諦めるのはもったいないですよね。
ということで、今日は「なぜ曇りだとパッとしないのか?」そして「曇りの日にどのように撮影したらいいのか」ちょっと考えてみようと思います。
曇りというのはどういう状態か?
そもそも曇りというのはどういう状態でしょうか?あたりまえの話にはなりますが、太陽が雲で隠れてしまっている状態ですね。
本来であればそのまま地上に届くはずの光が雲に遮られているため
- 光量が低い
- 光が拡散されている
状態となっているわけです。
光量が低い
雲で遮られているため地上に届く光の量が少なくなります。写真とは光を記録させるものなので光の量が少ないと必然的に写真を撮るのが難しくなります。
光が拡散されている
雲がなければそのまま直接届くはずの光。しかし、曇りの日には空一面雲に覆われています。この雲のおかげで光は拡散させられてしまいます。
雲で光量が低く、さらには拡散した光は方向性が弱まるので被写体はフラットな雰囲気、のっぺりとした感じになるのです。
曇りの日に写真がパッとしない理由
ではそういった曇りの日に写真がパッとしない具体的な理由を考えてみましょう。
光が少なく陰影ができにくい
拡散した光がのっぺりと被写体を照らすので陰影ができにくくなります。影というのは普段は気にすることがないかもしれませんが、ありとあらゆるところに出ています。
その何気ない影があることで、僕らはそのものに立体感を感じることができるわけです。特に写真というのは二次元のものなので両目で見るような立体感というのは感じられません。
だからこそ陰影というのは二次元の中で立体感を感じるために非常に有益な情報の一つになるわけなんですね。
例えばこの山のように陰影がハッキリとわかることで迫力を感じることができます。
ところが曇りだと陰影がなくなるため、本当はゴツゴツしているはずの山もこのようにのっぺりとした雰囲気になってしまいます。
山本来の迫力もいまいち感じられないですよね。
このように陰影というのは写真を撮るうえで重要な要素のひとつだということが分かりますし、曇りの日というのはこの陰影を得ることが難しくなるわけです。
コントラストや彩度が低くなる
曇りの日には色の彩度が低くなります。これも写真がパッとしなくなる要因のひとつ。晴れた日であれば鮮やかに発色するのですが、曇りの日はくすんだような色になります。
同時にコントラストも低くなります。これは雲に阻まれた光が全体的に薄暗く物体を照らすため明暗差が少なくなるからです。コントラストが低く明暗差が少ないため色の対比が不鮮明でいまいちパッとしないイメージになってしまいます。
上の部分に空という余白ができる
陰影の少なさ、コントラストや彩度の低下などはけっこういろんなところで解説されているのですが、個人的に曇りの日がパッとしない理由の最も大きなウェイトを占めているのがこの「上の部分に空という余白ができる」ことだと思っています。
こっからはわりと自分がそうではないかなと仮説を立てている部分が多いので、あってるかどうかは分からないのですが筋道たててお話してみようと思うのでお読みいただければ嬉しいです。
この上の部分に余白があるとどうなるのか?「視線の誘導」と「構図」などから読み解いていこうかと思っています。
とうことでちょっと曇り空の話から少し寄り道したいと思います。
写真における視線誘導の重要性
興味のある作品は隅々まで見てしまう
人は素敵だな、と思う作品はその隅々まで鑑賞しています。
逆に言えば、うまくその視線を誘導してやると自分の見せたいものが明確となり、人はその作品を見たとき心地良いと感じるわけです。
視線誘導がいい作品に絶対必要というわけではありませんが、それでも個人的にはそのウェイトというのはかなり占めていると思いますし、過去の芸術家たちが残した作品にも視線誘導をするという明確な意思を感じます。
そのへんこちらの本が非常に参考になりました。
[blogcard url=”https://logcamera.com/ewomiru/″]主題が明確になりながらも、リーディングラインによって視線を誘導され画面内のあらゆるところを隅々まで見せられるような作品というのはやはり見ていてい気持ちがいいわけです。
逆に言えば、視線が作品の枠内から飛び出してしまう、というものはそこで意識が作品の中から飛び出してしまうという恐れがあるわけですね。
写真では「手前が下」で「奥が上」
構図の構成をちょっと考えてみます。
もちろん例外もあるのですが、写真の中では基本的に「手前が下」で「奥が上」になります。
そして、人の視線というのはこれまた基本的には手前から奥へと流れていきます。この写真なんかはちょっと分かりやすい例を出していますが感覚的にモノを見る場合手前から奥へと視線が行ってるというのは実感できるのではないでしょうか。
と、なると。
いくつかの例外はありながらもここでひとつ心にとめておいてほしいのは「写真を見たとき、基本的には手前から奥。つまり下から上へと視線が移動している」ということなわけです。
視線は暗いところから明るいところへと移動する
例えば額縁構図なんてものがありますが、なんで額縁構図がいいかというとちょっと暗めのものを額縁のように配置することで明るい場所へと視線が誘導されるからです。
そこに見せたいものを置くことで効果的に人の視線をもっていくとができます。
このようなグラデーションをあなたはどのように見たでしょうか?
おそらく黒の部分から白の部分に向けて見ていったのではないでしょうか?
舞台などでスポットライトで役者さんを照らすのもそちらに視線を集中させたいからですよね。
人は「暗いところよりも明るいところに視線が行く」、「暗いところから明るいところに視線を走らせてしまう」ものなのです。
・視線誘導は何を見せたいかが明確になるため重要
・視線は手前から奥に向かっていく
・視線は暗いところよりも明るいところに行く
・暗いところから明るいところに視線を走らせてしまう
曇った写真の構図がどのような構成になっているか?
さて、写真を見たときの視線の動き方や構図の構成について書いてきたことを頭に置いて、実際に曇った写真の構図がどのような構成になっているか見てみましょう。
曇り空というのは必然的に空が白く明るくなります。
視線は「暗いところから明るいところへ流れてしまう」ので、曇りの構図では前景から空へ向けて視線が流れます。
さらには「手前から奥へ視線を移動させる」ということも書きましたね。この写真でも下から上へと視線は動いていってしまうわけです。
つまり曇り空の写真というのは「空の白い部分がものすごく視線を引きつける力を持ってしまっている」というわけです。
曇り空の白い部分を見せたいわけではない
構図の中でもっとも視線を引きつける力をもつ部分が曇りの空なのんですが、じゃあ写真を撮ったときに曇り空を見せたいか?というとそうではないわけです。
本来、主題にしたいものは前景である場合が多いと思うのですがそこに目が行かずに、空に強烈に視線を引っ張られてしまうわけですね。
例えばこの写真なんかも主題は山や紅葉のつもりなんですが
曇り空の明るい部分と奥から手前に誘導される視線のせいで主題ではないほうに視線が抜けていってしまうわけです。
抜けた視線が戻ってこない
さらに曇り空の写真で問題なのが抜けた視線が戻って来ない点です。
本当なら画面の中の隅々を見てもらえるような視線の誘導をさせたいところなのですが、主題でもない曇り空が視線を強烈に引っ張ってしまったあとそのまま視線が抜けていってしまうのです。
曇りの日の撮影は難しい
ということでおさらいです。
曇りの日だとなぜ写真がパッとしないのか。
- 光がなくて陰影ができない
- コントラストや彩度が低くなる
- 構図の構造上、視線が空に持っていかれてもどってこなくなる
ということが原因であることがなんとなくおわかりいただけたでしょうか?
曇りの日にはどのような撮影をしたらいいか
曇りの日に写真がパッとしない要因みたいなのはなんとなくわかってきました。ではここからは実際にその要因をもとにどのように写真を撮ったらいいか考えていきましょう。曇りの日に撮影できるようになると引き出しが多くなるのでとてもおすすめです。
空を入れない
こちらの紅葉の写真なんですが当日はドン曇りの日でした。
空を入れてしまうとどうしても曇り空の白に視線が流れていってしまうので空を入れないような構図で撮影しました。空を入れないことにより現像時にコントラストや露出もコントロールしやすくなります。
この写真も曇りの日だったので完全に空をカットした構図。紅葉シーズンなど色を入れられるようなポイントだと曇りの日でも空さえいれなければけっこうどうとでもなります。
さらに暗い場所へ行きコントラストを作る
曇っていてパッとしない原因のひとつがコントラストの低下でした。明暗のない写真はどうしてものっぺりとしてしまいます。
そんなときはさらに暗い場所に行って無理やり明暗差を作るという手もあります。おすすめなのは森の中にあるような渓流や滝など。
ガチで曇っている日はちょっと難しいかもしれませんが、ある程度光量のある曇りの日であれば森の木々が影になりその隙間から入ってきた光がコントラストを生んでくれます。
曇りで光量も少ないのでスローシャッターすることで水がぬるっとしたようなおもしろい雰囲気で撮れます。
室内に入ってしまうのもおもしろいです。曇りの日でも室内に入ってくる光は明暗差を生んでくれるので、曇りの日独特の柔らかい雰囲気の光を切り取ることができますね。
全体を白くする
最近のイチオシはこれです。
構図の構成上、上に白い曇り空があると視線が全部そちらに引っ張られる。ということは下にも視線を引っ張る引力を作ってやればいいわけです。
全体的に白くすることで明るさのもつ引力は四方八方に引っ張られます。そうなると結局、視線は中央にあるオブジェクトに集中します。
何もないところに点景があると、人はまずそれを見てしまうという習性もあります。
そして、ポイントのひとつとして現像時に段階フィルターを使って若干外側を暗くしています。曇りの日だと白いところに視線が抜けてしまう逆のことをやっているわけですね。
外側が若干暗く真ん中が明るくなっているので、視線は見せたい主題である点景に引っ張られます。
このときできるだけ他の情報が少ないほうが主題が目立つので海の部分をNDフィルターを使ってのっぺりとさせています。
[blogcard url=”https://logcamera.com/nd/″]曇りの日におすすめの被写体
森の中の滝や渓谷
曇っている日は空を写したくないので森の中に入ってしまいましょう。
滝や渓谷はすこし長めのシャッタースピードのほうが水の流れを表現できるので、光量の少ない曇りの日にピッタリです。
コントラストが低下してのっぺりとしてしまうというデメリットも、水が明るく写ってくれるのでしっとりとしながらもメリハリのある写真となります。
花
曇りの日は花を撮影するのにもおすすめです。地面に咲いているような小さい花なら空をまったく入れず撮影することができますね。
逆に曇りの日のほうが、強いコントラストが出ることなく、優しい雰囲気で撮ることができます。
中望遠くらいのレンズで撮ると前後がボケてきれいな写真になります。
海沿いの岩
海沿いの岩などを長時間露光すると印象的な写真を撮ることができます。
こちらの写真は日中にNDフィルターをつけて撮っていますが、晴れの日では光が強すぎてうまく撮れません。こちらも曇りならではの表現方法ですね。
NDフィルターとは?NDの選び方・種類・使い方をまとめてみた!
流れる雲
ドン曇りだと難しいですが、それなりに曇っているような日であればNDフィルターを使って流れる雲を撮ることができます。こちらもND1000を使って撮影。
雲の流れるスピードなどで雰囲気は変わってくるので数十秒くらいからいろいろ試してみましょう。
室内
室内に入ってしまって、窓から入ってくるなどを撮るのも面白いです。晴れの日だとコントラストが強くなりすぎるのですが、曇りの日だと優しい光がいい感じになってくれます。
よくボケる単焦点レンズやオールドレンズなどで撮るとさらに雰囲気が出ます。
まとめ
曇りの日になんとなくパッとしない写真になってしまう理由とその解決方法でした。
僕も昔は曇りの日って苦手だったので、せっかくのお休みに天気が悪いとテンション下げてました。しかし、ある程度曇りでも撮れるようになると休みを無駄にせずに撮影に出かけられるようになります。
曇りは曇りでまた違った魅力のある写真が撮れるのでぜひチャレンジしてみてくださいね。