本が出ました!「美しい風景写真のマイルール」

鍵掛峠から見る大山の紅葉の夕景

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車の屋根を雨が叩く音で目が覚めた。

午前2時、鍵掛峠。 車で仮眠をとるつもりが無理な姿勢と、この雨であまり寝た気がしない。うつらうつらとしていると、その雨もやがてあがったようだ。

けたたましくiPhoneのアラームが鳴る。午前3時。

 

 

「おい、起きろ。写真の時間だ。」

 

 

わかってる。眠い目をこすりながら、車の外に出る。満開の星空。3時から快晴という天気予報はバッチリ当たったようだ。ただ一か所を除いて。

曇りの鍵掛峠

写真の神様は気まぐれだ。 こんなに満天の星空なのに、お目当の大山の上にはぽっかり雲がかかってしまっている。

仕事終わりに車を走らせはるばるやってきたのにこれじゃあ冴えない。 じっと雲が晴れる瞬間を待つ。

朝の曇りの鍵掛峠

けれど、一度へそを曲げた大山はいつまでたってもその姿を見せてはくれない。 いつのまにやらすっかり朝だ。 延々5時間以上ねばってみるが、もう根負けだ。

ふてくされるように山を降り、ほんの少しのパンとコーヒーを詰め込むように腹に入れると、寝不足のためかあっという間に睡魔が襲う。

 

 

「おい、起きろ。写真の時間だ。」

 

 

こうるさいやつがまた耳元でわめいている。いつの間にか眠っていたようだ。

午後2時。 頭を掻きながら、逡巡する。 せっかくここまで来たのだから夕焼けを狙おうか。 ピークの鍵掛峠の道の混みように顔をしかめながら、這々の態で駐車場に車を滑り込ませる。

日没まで3時間。ぼんやりと空を眺める。これでまた雲が抜けなければ、踏んだり蹴ったりだなあ。

 

 

 

 

 

 

大山 鍵掛峠の夕景

写真の神様は気まぐれだ。

時に恐ろしいくらい素晴らしい光景を見せてくれる。 一雨降った後、遮るもののないクリアな視界、真っ赤に焼ける鍵掛峠の紅葉と雄大な大山の南壁。

これだから風景屋はやめられない。

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