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世界の果て。
幼い頃の僕の足でいける範囲はちっぽけで、ようやくたどり着いた世界の果てには広大な川が流れていた。
奥出雲を源流として脈々と流れるその川の名前は斐伊川。
高校を卒業し、この町を出て行くため向かう駅への道すがら、その川に架かる橋を越えた。ここはもうすでに世界の果てではないんだと、感傷的になったことを今でもはっきりと覚えている。
古くは古事記にもその名前が記し残されている斐伊川は、度々洪水を起こしている。この荒ぶる川が昔の人にはまるで龍のように見えたことだろう。そして、この川の治水の歴史が、龍をひれ伏すヤマタノオロチ伝説の元になったという説もある。
スサノオノミコトに退治されたヤマタノオロチからは三種の神器である草薙の剣が、その体の中から出てくる。これは斐伊川上流で採取されていた砂鉄から連想されたと言われている。
もののけ姫で描かれていたようなたたら製鉄が奥出雲では行われており、質のよい刀が作られていた。
斐伊川の川床は砂が堆積している。夏になり水量が少なくなると、まるで龍の鱗のようにその川床が浮かびあがることから、やはりこの川はヤマタノオロチであったのだろうなと古事記の世界を頭のなかに思い描く。
そんな龍の姿を撮りたい、とずっと思っていた。僕の世界の果てに横たわっていた巨大な龍の姿を。